それで、よかよか
校長ちゃんの本「それでよかよか」
著者校長ちゃんの「それで、よかよか」が株式会社中村堂より発行されました。某私立高校校長の寛容の精神が醸成される社会の実現を願って、不登校経験者が多数を占める同行の日常を語り広げられている本です。どの話も心に温もりを感じ、考えさせる話しばかりです。是非、皆さまにも読んでいただきたく、本の中で私の好きな話しを今回、紹介させてもらいたいと思います。
ウサギとカメ
生徒さんたちと話をしているときに、それまでニコニコとしていた彼らの瞳に、突然涙があふれることがあります。全てがそうだとは限りませんが、本人が隠していたつもりの「核心」を不意に突かれたとき、急に涙が流れ出ることが多いようです。
悲しみや苦しみを隠そうとするのが人間の常。我慢こそ美徳だという価値観が極めて強いと思います。それが良いとか悪いとかではありません。目に見えるか見えないかはの差は大きいです。例えばお医者さんと患者さんの場合、出血があれば治療が必要な傷がはっきり分かるのでしょうが、レントゲンやMRIまで撮らなければ分からない病気も多いはずです。ましてや私たち人間の精神は、そのような医療機器に写ることはありません。本人の口から真実が語られない限り、私たちは全て推測、つまり想像するしかないのです。
有名な『ウサギとカメ』の話。ウサギさんは油断して寝てしまう設定となっていますが、ひょっとしたらきつくて休んだのかもしれませんし、カメさんを待ってくれていたのかもしれません。ウサギさんは実は、今にも折れそうな心の中を悟られないように辛抱し続けて、じっと耐え抜いている最中にカメさんとの競争に臨んだのかもしれないのです。カメさんこそが辛抱強いという前提だけでは、大切な何かを見失ってしまいかねません。
「決めつけないこと」をいつも心がけていいます。見えていないこと、気づいていないことがたくさんあるのだと思うから。こうだよね?と押しつけるのではなく、「どうしたの」「どうしたいの」「私に何ができるかな」という三つの柱を強く意識しています。そしてようやく彼らが表現してくれた「弱音」や「愚痴」を否定しないようにしています。そこをたったそれくらい!と押えつけてしまったら、彼らがもう本音を語ってくれることはなくなるでしょう。
あっちの子と比べてうちの子は弱い、この子はお兄ちゃんほど優しくない…誰かとの比較に私はあまり意味を感じません。ウサギとカメはどちらも辛抱強いしどちらも優しいのでしょう。そこに個人差があるだけの話です。辛抱強さというものは、表から見えにくいものなのです。
必ず当事者の視点でみること。出来ていないことに気づかされます。こんな素敵な話がたくさんのってます。
たまに読み返して自身の振り返りをしたいです。