自殺希少地域その5
ゆるやかにつながる
岡檀さんの自殺希少地域の現地調査による自殺予防因子その5は「ゆるやかにつながる」です。
自殺希少地域のある町のコミニティに独特な要素を、これまでに四つ挙げた。このあと示す五つ目は、他の四つの要素の根源であると同時に帰結であるとも言える。この町では、「ゆるやかな絆」が維持されている。
隣人間のつきあいに粘質な印象はない。基本は放任主義であり、必要があれば過不足なく援助するというような、どちらといえば淡泊なコミュニケーションの様子が窺えるのである。
「立ち話し程度」と「あいさつ程度」のつきあいに集中している。つまり、隣人間でのコミュニケーションが切れているわけではないのだが、かなりあっさりとしたつきあいを行っている様子が見えてくる。
この町では人間関係が固定されていないという側面が目につくようになる。
人と人のつながりがゆるやかで、人への評価は良くも悪くも固定しないし、ひとたび評判を落とせば二度と浮上できないというスティグマを、恐れることなく生きていくことができる。
人間関係が膠着していないという環境も、人々の気持ちを楽にする。
自分の暮らすコミニティ内で、もしも、ひとつの人間関係がこわれたとしても、別の関係が変わらず生きているという確信がもてるのである。
これこそが弱音をはかせるリスク管理術である。